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2025年5月29日 ー 株式会社巴コーポレーション 株主提案について

約6分

ひびき・パース・アドバイザーズ(以下、「私ども」または「ひびき」といいます。)と投資一任契約を締結しているひびき・パース・アオバ・ファンド(以下、「HPAF」といいます。)は、4月18日、コア投資先の一社である株式会社巴コーポレーション(以下、「巴」または「当社」といいます。)に対し株主提案書を送付し、受理されました。そして、5月26日、当社より、本提案内容が、取締役会の「反対意見」と共に公開されました。そこで、HPAFの提案書を本投稿の下に添付をするとともに、株主提案に至った経緯をご説明します。

当社は立体構造建築を得意とする建築業を営んでおり、鉄塔、橋梁、鉄骨の幅広い分野でプレゼンスを発揮しています。特に、1932年に開発した「ダイヤモンドトラス」の立体構造は、美しい大空間の創造を可能にし、体育館、各種の博覧会・大展示会場等で数多く採用されており、無柱大張間建築の第一人者として絶大な信頼と評価を受けています。業績は堅調に推移をしており、25/3期の売上高は347億円(前年同期比+4%)1、営業利益は39億円(同+23.7%)1と増収増益での着地となりました。26/3期は減収減益のガイダンスを発表しておりますが、私どもは、「ダイヤモンドトラスの巴」として建築業界に広く知れ渡っている当社のプレゼンスと技術力を背景に、厳しい外部環境下においても引き続き堅調な業績を維持すると考えております。

優れた事業を誇る当社ですが、①経営陣に企業価値向上のインセンティブが薄く、その結果、②資本政策に対する課題に手当てがなされないまま、PBRは長年1倍を割れて推移しております。

まず、①について、当社は役員の報酬に株式報酬を導入しておらず、24/3期の有価証券報告書によると、当社の執行取締役4名の株式の持分の合計は時価で2.0億円23、時価総額の0.4%と極めて低く、また、深沢社長の持分1.4億円に対し、深沢社長を除く執行取締役3名の一人当たり平均持分は1.9千万円と、所有額は極めて低水準です。これでは、経営陣が株主と同じ目線に立っているとは言い難く、企業価値最大化に取り組むモチベーションは向上しないのではと考えております。

次に②ですが、25/3期末で当社が有する投資有価証券(主に政策保有株式)は、総資産の約30%、純資産の約50%に及ぶ約354億円1に上ります。更に、25/3期は関連会社の子会社化に伴う特別利益約121億円1を計上したことにより、当社の純資産は益々増加しております。内部留保が余剰に積み上がっていることから、2023年5月に公表された中期経営計画「TOMOE BUILD up 5」のROE目標10%に対し、税引後営業利益(NOPAT)ベースでの25/3期ROEは3.8%1と大きく未達です。

また、当社は本業とは関係のない不動産資産を保有しており、24/3期の有価証券報告書によると、その税引き前未実現利益は約400億円2と考えられます。これらは原価で計上されていることから純資産には反映されないため、一般的に利用される簿価基準でのPBRは0.8倍3ですが、当該不動産含み益調整後PBR(不動産時価換算後のPBR)は0.5倍23と、非常に割安な状況が継続しています。

このような状況に対し、当社は2024年11月に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」において、PBR分母の純資産(=自己資本)が株価以上の上昇傾向にあることから、株価アップに向けた対策が大きな課題である、との認識を示されており、私どもも同様の認識をしております。

上記のような当社の課題に対し、HPAFでは以下の2つの株主提案を実施しました
1.当社の取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く)に対する年額300百万円以内、付与上限を251,000株とする譲渡制限株式付与のための金銭報酬債権の付与(第4号議案)
2.DOE10%に相当する剰余金の配当、来期以降も同額以上の配当額を維持することを目標とすること(第5号議案)

株主提案書

【当社反対意見に対する私どもの見解】
1. (第4号議案)について、当社は反対意見の中で、「実際に株式報酬の比率が報酬総額の50%以上となるように設計する場合には、取締役の報酬構成が過度に株式報酬に傾斜し、バランスを著しく欠く報酬体系になる」と述べています。しかしながら、私どもは本提案において、既存の固定報酬に株式報酬を適切に追加することで、経営陣が株主とインセンティブを共有し、より強固に企業価値向上にコミットするための仕組みを志向するものです。その点において、当社の反対意見は提案の趣旨を正確に捉えていないと考えています。

一方で、「本議案の内容を真摯に受け止め、企業価値向上に資する報酬制度の在り方について検討を進める」旨のコメントが示されたことは前向きに捉えており、今後も建設的な対話を重ねていけることを期待しております。

2. (第5号議案)については、「このような配当を継続することは、結果として当社の中長期的な企業価値向上、株主共同の利益の向上の機会を奪うことに繋がりかねない」と述べています。しかし、当社が本業とは関係のない不動産や政策保有株式を多数保有し、純資産が過剰に蓄積されている現状を踏まえれば、最低でもDOE10%水準の株主還元を実施しなければ、当社の掲げるROE10%という中計目標の実現は困難であると判断しています。

また、「株主還元策の強化を推進していくことを検討する」、「適宜適切なタイミングで政策保有株式の縮小を図る」旨のコメントもされており、少なくともROE10%の達成までは、本業の利益のみならず、政策保有株式や本業とは関係のない不動産の売却の取り組みで生まれた余剰現預金を活用する観点で、より一層踏み込んだ株主還元策を継続的に求めていく所存です。

つきましては、当社の経営陣が株主と同じ目線に立ち企業価値向上に取り組むことが可能な体制を構築し、株主還元強化による資本効率向上を通じた株主共同の利益の向上を実現するために、こうした提案を通じて広く株主の皆様にもお問いかけをさせていただきたく存じます。当社の本質的な企業価値向上を応援する株主の皆様のフェアなご判断を頂きたく、宜しくお願い申し上げます。

125/3期当社決算短信
224/3期当社有価証券報告書
35/19終値1,324円ベース
4NOPAT28億円(営業利益39億円*(1-税率30%)) / 純資産726億円


なお、今回の資料等の公開については、特定の有価証券の取得の申込みの勧誘若しくは売買の推奨又は投資、法務、税務、会計その他いかなる事項に関する助言を行うものではありません。