皆様、今年もよろしくお願い致します。Hibikiの新年第一回目の投稿は長年の投資先となります。
2025年1月14日、私どもの主要投資先の一社である不動産再生投資業のスター・マイカ・ホールディングス(株)(以下、「スターマイカ社」、若しくは「当社」)が決算発表及び決算説明会を開催しました。当社は、日本企業には珍しく、適度なレバレッジを活用しつつ、15%内外の高いROEを維持継続しながら成長を続けてきた稀有な企業ですが、資本市場からはなかなか認知されず一桁に留まるPER及び1倍前後を行ったり来たりするPBRといった低い株価評価が継続してきました。
私どもも、長年にわたり当社経営陣とエンゲージメント及び意見交換を継続してまいりましたが、今回の決算説明会は、当社が今までにない強い覚悟を持って市場と向き合い、上場企業として成長していく決意を強く感じる内容でしたので、ここにその決意に敬意を表しつつ改めてご紹介をしたいと思います。
今回の決算発表においてインパクトのある目玉となる話題は①中期経営計画の上方修正、そして、実はそれを伝える②当社の開示の姿勢の大きな変化です。
中期経営計画の上方修正は、様々な点でなされていますが、ここで二点あげさせていただきます。先ず、一点目は図1の通り、売上/利益の定量目標の開示(2026/11期の売上700億円、営業利益70億円、当期利益38億円)です。
(出所:スターマイカ社 「中期経営計画の見直しに関するお知らせ」より一部抜粋)
不動産市場はあくまでシクリカルに動き、金利動向にも大きく左右されることから、昨年の1月の当初中期経営計画では、熟慮の上に定量目標の開示を控えていた経緯があります。この度、敢えて、朝令暮改のような形で定量目標を出してきたことには、当社の自信と覚悟を感じざるを得ません。一度出したものを、状況が変化したとしても変える勇気がない企業が多い中で、前向きな発表と受け止められます。
再生不動産業が、不動産業の中ではニッチと言われてきたことは事実ですし、私どもが以前2022年11月に当社に送付した公開レターにはそのニュアンスで、当社事業内容を新興不動産業のさらなるニッチなサブセクターとして紹介しています。今回の定量目標を拝見し、改めて、人口減少加速社会、高齢化社会、そしてサステナブル社会が加速する中、継続的に仕入れと売却を回転させながら事業を安定的に拡大させ、社会に貢献するコアの不動産プラットフォーマーとして自信が現れてきている、と私どもは感じています。尚、2026/11期の当期利益38億円が達成されると仮定し、現在の時価総額254億円を基にPER倍率を計算すると、6.7倍になります。サステナブル社会を支える企業であり、EPSが二桁成長する会社が日本全体の象徴ともいえるTopixの今期予想PER倍率15倍の半分以下、という現実に疑問を持つのは私どもだけではないのではないでしょうか。
中期経営計画の上方修正の主要二点目は、図1中に赤枠で囲わせていただいたEPS成長率です。当初の中期経営計画では、5%超であったところを、14%超と3倍近くに上方修正しています。
私どもの長年の経験に基づく残念な感想は、多くの企業の利益目標は眉唾であるということです。しかし、コミットできない数字は開示するべきではないという当社の極めて「真面目」かつ「保守的」な理念の下に、当初の中期経営計画で数値目標を開示しなかった企業が、「利益水準」のみならず株式数を考慮した「EPS成長」の高い目標を“手のひらを返して”でも提示された姿勢には驚いた次第です。私どもとの意見交換を含め、多くの投資家の懸念や意見をご参照いただいたことで、改めて「一流上場企業」としてのプライドを自覚されたのであれば、これは大変嬉しいことであり高く評価したいと思います。
そして当社の開示姿勢に関してです。実は、こちらの方が私どもしてはスターマイカ社のより大きな変化を感じている次第です。
今回の説明会資料の新たな開示に沿って解説していきたいと思います。尚、新しい開示の解釈等に関しては私どもの主観ですのでそのようにご理解を賜れると幸いです(実際の解釈等については直接当社に皆様からお問合せをいただけると幸いです)。こちらに関し、ポイントは3点あります。
先ず、一つ目のポイントは説明会資料の12頁と13頁です(図2と図3)。
(出所:スターマイカ社2024年11月期決算説明資料12頁より抜粋)
私どもがエンゲージメントに当たって当社経営陣に対して長年問いかけてきていた点は、「会社全体の状態に対する一株当たりの議論」でした。2024年11月期において、業界慣習からして保守的と言える不動産鑑定評価ベースで268億円の含み益があることは大変素晴らしいこと1ですが、私どものような零細株主にはその268億円が自身の所有している株式のどの程度か、じっくり計算をしないと分かりません(実際は、図2から類推される通り、一株当たりで税引き後でも500円以上の大きな額となります)。このように税引き後の含み益で500円以上の株式を、今後成長する事業「込み」で749円(2025年1月14日終値)で購入できるのは「おかしくないですか?」という問いを当社自身が投資家に問いかけていくことに大きな意義があると私どもは感じています。
図3:(参考)含み益の増減
(出所:スターマイカ社2024年11月期決算説明資料13頁より抜粋)
もう一点私どもが当社経営陣に御伝えしていた当社が積極的に主張すべき強みは、他の典型的な大手デベロッパーと異なり、含み益の実現がビジネスモデルに組み込まれている点です。当社は、最近では保有している約4,000戸の在庫の内、毎年1,000戸以上のマンションを売買しており、在庫を淀みなくせせらぎのように回転させていくスタイルが一つの特徴になっています。購入したマンションをリノベし売却することが利益の源泉になっているため、大手デベロッパーのように100年前から所有する一等地の不動産を「放すつもりもなく」所有しており、その含み益が「絵に描いた餅」状態の不動産業とは一線を画しています。しかし、その含み益が常にどの程度実現しているのか外部からは見えていなかったことが私ども投資家としてもある種「もやもや」している部分でした。これが本資料の図3の開示で解決しています。
図3の「当期の販売による減少(実現)」の約72億円に相当する部分が、既存保有不動産の売却による実現であり、前期含み益の約28%(=72÷258)が実際の利益という形で株主に実現していることになります。以前の開示では、例えば、前期から今期にかけての含み益258億円⇒268億円のグロス数値のみが示されており、表面上含み益が増加しているだけで実現されていないようにも見えていました。しかし、当該開示により、既存の保有不動産の含み益は売却を通じて実現され、株主還元等の原資にもなっているという事実を市場に強調して伝えることは大変意味があると、私どもは考えています。
図2に示される、着実に増加している一株あたりのNAVと図3を組み合わせて見ることで、当社の事業自体が、優良な賃貸不動産を所有しつつ、その不動産含み益を常時回転させて株主に還元しているビジネスモデルである、ということが証明されるのです。このような開示により、不動産関連企業の中でも当社のユニークな事業への理解が投資家の間で深まり、リスクプレミアムが低下し、PER倍率がその成長に相応しい水準に近づくことを私どもは期待しています。
次に、2つ目のポイントは17頁です(図4)。
図4:中期経営計画定量目標見直し【3/3】 キャピタルアロケーションポリシー
(出所:スターマイカ社2024年11月期決算説明資料17頁より抜粋)
前回の説明資料からの変更点として、「成長投資額500~550億円程度/年」が追加されています。以前までのキャッシュアロケーションは、多くが成長投資に振り分けられるという程度の開示に留まっていましたが、成長投資(今後の物件取得)に関わる数字をあえて対外的に発表することで、株主還元とのバランスを定量的に推測することが可能となり、こちらもリスクプレミアムの低下に寄与するのではないかと私どもは感じております。
最後に、3つ目のポイントは34頁についてです(図5)。
図5:株主等との対話の実施状況【1/4】
(出所:スターマイカ社2024年11月期決算説明資料34頁より抜粋)
本頁は、当社の課題として「PER倍率が大きく低下」してしまったことを真摯に受け止めた内容です。その上で、PBR1.0倍割れ解消に向けて、PBR=ROE×PERの考え方を基に、既に高いROEを達成しているため、より高いPER評価の獲得を目指す積極的な姿勢は非常に理にかなっているのではないでしょうか。
「安定的な収益(EPS)の持続的な成長」と「当社を投資家にアピールする積極的なIR活動」を通じて、当社の将来成長期待を分かりやすく、かつ過剰に保守的にならず投資家に提示することで、現在の割安な株価水準が認知・解消され、高いPER評価獲得につながると、私どもは期待しています。また、当社の属する中古マンションデベロッパー業界は、人口減少・高齢化の進行と新築マンションの建設コスト上昇に伴い、都市部における中古マンションの需要が活発化しており、非常に強固なファンダメンタルズ環境下にあります。多額の含み益を有し、それが淀むことなく回転し実現していく稀有なビジネスモデルを有する当社が「より高いPERで評価をされてもおかしくはないのでは?」と投資家に語り掛けるその姿勢に、私どもも深く共鳴しています。
今後もスターマイカの成長を熱く見守って参りたいと思います。
1当社の販売用不動産2024/11期残高 958億円に対して28%
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