2025年5月15日、私どもの主要投資先の一社、(株)アルファポリス(以下、「当社」)が決算発表を行い、23日に決算説明会を行いました。その内容に関して私どもの所感及び今後投資家として着目していきたいポイントなどについてコメントをさせていただきます。
ひびきは、叱咤激励型エンゲージメントを継続中です!
今回の決算を踏まえて、私どもが着目したポイントは3つです。
まず一点目は当社の好調な業績についてです。25/3期の売上と経常利益はそれぞれ前期比30%と40%ずつ増加¹での着地となりました。図1でご覧いただけるとおり、26/3期も売上で約18%、経常利益で約15%の上昇を見込んでおり、24/3期までの成長の鈍化懸念を払拭し、新たな高みに駆け上るかのような、好調な業績見通しとなっております。
(出所:当社決算説明資料)
当社の堅調な業績の背景として、全社売上の約75%を占める漫画事業が着実に成長し、ブルドーザーのように力強く積み上がっている点があげられ、最初に拝見した際に率直に“すごい決算だな”と感服いたしました(図2)。25/3期の刊行点数は前期比28点増の215点となり、シリーズ累計500万部を突破した『月が導く異世界道中』や、1月に4巻が刊行された『華麗に離縁してみせますわ!』がコミックシーモアの「電子コミック大賞」を受賞したことなど、人気シリーズが引き続き好調に推移しております。26/3期につきましても、2025年4月からアニメ放送を開始する『勘違いの工房主』の更なる業績への貢献等、人気シリーズが好調に推移することに加えて、新たなヒット作品にも期待ができると考えております。
(出所:当社決算説明資料)
図3に示されている通り、当社は継続的にアニメ化されるヒット作品を創出しており、その強みの源泉は、誰でも無料で投稿、閲覧が可能な小説・マンガ投稿サイト「アルファポリス」にあります。本プラットフォームを通じて読者から得られるフィードバックや評価を活用しつつ、優れた編集者が出版作品を厳選することで、高いヒット率の実現と、大コケするリスクの最小化の両立をしております。ネットワーク効果を最大限に活用した効率的かつ強固なビジネスモデルは、当社の高い再現性と競争優位性を支える重要な要素であり、私どもはその価値を高く評価しています。説明会にて、梶本社長ご自身も「上はもはや4大出版社と数社に限られる。当社も早期に大台を超えたい」と述べられていた通り、当社が出版業界のトップ企業と肩を並べる日も、そう遠くはないと考えており、当社への期待を隠せません!
(出所:当社決算説明資料)
今後の事業面における成長の新たな柱に関して、私どもが特に期待しているのは海外と上述のアニメ事業です。この点、説明会の中では、清水から海外事業の実績とアニメビジネスの今後の見通しについてご質問させて頂きました。ご回答としては、海外事業において、既に当社がCrunchyroll(クランチロール)と直接契約し、海外配信の窓口を担っているアニメ作品が存在しており、共同窓口による案件もかなり増えているとのことでした。アニメビジネスに関しては、出資比率が高まっており、当社が相応の金額を拠出することを前提としたプロジェクトや、場合によっては100%出資による取り組みも始まっており、25/3期は前期比利益ベースで1.8倍進捗したとのことです。これにより、中期重点戦略が着実に進行していることが確認でき、嬉しく思います。
また、清水から現在のM&Aの見通し、特に制作会社買収等の見通しについて、説明会で質問をさせて頂き、ご回答として具体的な話がある程度進んでいて、現在交渉中の案件が3件、うち2件はアニメ関係との説明があり、今後のインオーガニック戦略も駆使した当社の成長に強い期待を感じさせるものでした。
海外販売とアニメビジネスの拡大はまさに植えた種から芽が育ち始めている段階と感じております。この芽を勢いよくスピード感を持って大輪の花に育て上げるためには、リソースやノウハウの観点からも、M&Aや出資といったインオーガニック戦略の活用が不可欠と考えており、是非積極的な取り組みを継続頂ければと思います。
(出所:当社決算説明資料)
次に、着目している2点目は、株主還元についてです。従来無配を継続していた当社に対し、私どもは2024年3月1日付で企業価値向上施策ご提言書を提出し、「株主還元の強化」を含めた3つの提言を行いました。その後、当社は同年5月の決算発表において初の配当実施を発表し、その1年後となる今回の決算では一株当たり14円から24円に至るまで、約70%の増配を発表しており、決算発表直前の5月15日の株価終値1,308円対比で、5月23日の終値は、1,584円と株価は21%の上昇を示しており、投資家からの当社に対する期待と信頼の改善を感じております。
これらの動きや日々のエンゲージメントを通じて、当社が資本市場との向き合い方を確実に見直し、進化を続けていると実感をしており、私どもも株主として大いに評価をしております。
(出所:当社決算説明資料)
最後に、私どもが引き続き着目していくポイントとして、バランスシートの効率性に関する所見についてコメントいたします。率直に申し上げて、素晴らしい決算の中で唯一“もったいない”と感じてしまった点です。
当社は、オーガニック戦略のみでは使い切れないほどの高いキャッシュ創出力をすでに備えており、その結果として、現預金および純資産が必要以上に積み上がっていると私どもは認識しております。
具体的には、当社の25/3期のバランスシートでは非常に潤沢なキャッシュを抱えており、現預金は月商の約10ヵ月分、ネットキャッシュは115億円(前期比+19%)、現預金は総資産の68%、純資産比率は81%と、過剰とまでいえる純資産を有しており、より一層スピード感を持って、このキャッシュを成長投資にしっかりと振り向け、純資産の増加を圧倒的に上回る利益の更なる向上をお願いしたく存じます。
私どもが2024年に公開した投資先向けレター「同意なき買収」時代における上場の意義にも御座います通り、上場の最も重要な意義は、「厳しい競争に勝つための強力な手段」と考えます。具体的には、自社の株価評価を高くし、比較優位性を確保することで市場を味方につけ、M&Aや資金調達においてダイナミックな成長戦略を実現する事です。
そのため、M&A等に利用する資金を手許現金に頼るという考え方から一段踏み込み、余剰なキャッシュを持たない筋肉質なバランスシートを実現する事で、株主からの圧倒的な信頼を勝ち取り、企業価値を向上させ、その信頼を梃に攻めの資金調達手段として、自己株を活用する事もご検討頂ければと思います。
私どもは当社の株主として、引き続き継続的なヒット作品の創出と、インオーガニック戦略を通じた事業拡大による企業価値成長を大いに期待しております。今後も、温かく、時には厳しく、叱咤激励エンゲージメントを継続していきたいと思います(文責:清水)。
¹25/3期決算短信
当社への過去のエンゲージメントは、下記リンク先資料をご覧ください。
2024年12月27日 ー 株式会社アルファポリス ディスカッションについて
2024年3月20日 ー 株式会社アルファポリス 提言書の送付 説明動画について
2024年3月10日 ー 株式会社アルファポリス 書簡の送付について
なお、今回の資料等の公開については、特定の有価証券の取得の申込みの勧誘若しくは売買の推奨又は投資、法務、税務、会計その他いかなる事項に関する助言を行うものではありません。