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2025年12月8日 ー 東京コスモス電機の調査報告書に関するコメント

約3分

2025年12月4日、投資家の株主提案による経営体制の転換が実現した東京コスモス電機株式会社(以下、「TOCOS社」といいます。)より、「特別調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ」及び添付の調査報告書(開示版)(以下、「本報告書」といいます。)が開示されました。私どもの投資先とは異なりますが、本報告書は、上場企業の取締役、投資家、そしてガバナンス専門家及びコンサルタントに対し多くの示唆があり、本転換を成し遂げた投資家に敬意を表し、市場に広く周知させるべく、投稿致します。

特別調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ

TOCOS社は監査等委員会設置会社であり、本報告書の主な調査対象期間となった2024年~2025年にかけても、外形的には上場企業のガバナンス水準の要諦を満たしていましたが、その実態について極めて多くの問題があったことが詳細に記載されております。私どもは上場企業のこのようなガバナンスの実態は実際には氷山の一角であろう、と感じております。本調査報告書内で示された過去のTOCOS社の状況につき私どもが感じた主な問題は以下となります。

・米国企業Bournsの日本法人によるTOBが、主に株主からのプレッシャーを回避するための手段として画策されたこと、そしてその経緯(どのようにこの案件が開始したか)について取締役会で審議された形跡がないこと
・そのTOB価格を高く交渉しすぎ破談となるリスクを回避すべく、事業計画の内容に関してアドバイザーと共に恣意的に低めに誘導しようとし、さらに株主に対して応募中立を示す特別委員会の暫定答申に関し、一部業務執行取締役から強い不満が表明されていたこと
・別途国内上場企業からも買収を含む事業統合の意向が示されていたが、上記Bournsによる買収の検討期間と重なっており、面会を遅延させるなど対話を可能な限り行わないようにしていたこと
・2024年に開示した中期経営計画では足元3年は成長しないことが示され、その期間を開示においては「成長投資期間」と銘打っていたが、実際には具体的な投資計画がないに等しかったこと
・キャピタルアロケーション等が十分に検討されていないと社外取締役からも指摘がある中、株主提案に真摯に向き合わずに、「いかに反対するか」という結論ありきで提案株主の主張に対してネガティブキャンペーンを行っていたこと

取締役の善管注意義務と忠実義務が会社法及び民法に明確に規定されている中、そのミッションが企業価値及び株主の利益の最大化であることがインプライされる環境下、株主提案対応及びM&A交渉という、いわば企業価値に大きく影響のある「有事」にこのような経営が行われていたことに私どもは衝撃を覚えます。

尚、本報告書p.70の「第6 TOCOSのコーポレートガバナンス(原因分析の一環として)」には、総括として、本件の様々なガバナンス上の機能不全の実態が分かりやすく整理されております。お忙しい方は是非そちらだけでもご覧いただけますと幸いです。


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