Hibiki Path Advisors Website

Equity investing and advisory business

2025年8月8日 ー 株式会社マンダム 決算発表コメント

約5分

2025年8月7日、私どもの主要投資先の一社、(株)マンダム(以下、「当社」)が決算発表を行い、同日に決算説明会を実施しました。その内容に関して私どもとしてポイントと感じた点について、コメントをさせていただきます。

ひびきは、叱咤激励型エンゲージメントを継続中です!

今回の決算で私どもが着目したポイントは3つです。

まず一点目は、当社の業績が着実に回復しつつある点です。図1でお示ししている通り、26/3期1Qの売上と営業利益はそれぞれ前期比10%と46%増加しています。日本における夏シーズン品が、ロールオンの広告投下等を通じた展開強化により、前年比+18.7%と好調であったことに加え、後述するインドネシアのV字回復もあり、計画通りに着実な進捗を達成されています。ロールオンのCMは、変化を先取りして挑戦を続ける当社の印象を地で行くような内容になっておりますので、是非ご覧ください!

図1:業績

(出所:当社決算説明資料)

特筆すべきは、今回の営業利益の改善は、攻めの構造改革費用を十分に計上したうえでの結果であることです。図2でお示しした営業利益の前年比要因分析では、売上増・価格改定の効果による大幅な利益改善とともに、構造改革費用が大半を占めるその他項目に▲9億円を計上しており、更に1Qに想定以上に構造改革費用が前倒しで織り込まれた点が説明されました。当該構造改革費用は国内を中心としたもので、本年12月を目途に計上が完了する見通しとのことですので、構造改革費用計上完了後の来年度以降に利益面の伸長を期待出来る内容であったと感じております。

図2:営業利益の前年同期比比較

(出所:当社決算説明資料)

次に、注目している2点目は、インドネシア事業のV字回復についてです。本年4月に公開した企業価値向上施策ご提言書の中でも記載している通り、当社は他社に先駆けて当地に1969年に進出後、多くの島々からなる国の商流・物流網を地道に整備した上で、現地の生活に根差したマーケティング及び製品開発で飛躍的な成長を遂げました。然しながら、インドネシア事業は21/3 期より 5 期連続の赤字に陥っており、販売戦略及びコスト改善対策を断行されている状況です。

そういった状況の中、本年度のインドネシア子会社の営業利益は上半期で4.6億円¹²を突破し、昨年度対比では+11.4億円³と大幅な改善を実現しております。決算説明会の中では、上半期に計上を予定していた広告宣伝費用等の後ずれが生じたため、通期ではブレークイーブンを想定されているとのコメントがありました。こちらに関しても、構造改革という攻めの費用を計上したうえでも、通期でブレークイーブンになるということは、通年で前年比+18億円⁴の営業利益を実現することを意味しており、それだけの急速な回復を視野に入れられる状況に至るまでにご尽力をいただいた、経営及び従業員の皆様のコミットメントに投資家として感服しております。

前回の取材では、この構造改革を断行するにあたり、インドネシアにおける経営陣の刷新を行うとともに、渡辺取締役(PT MANDOM INDONESIA Tbk代表取締役)の陣頭指揮のもとで、今までに出来ていなかった当たり前のことを地道に一歩ずつ改善されているとのお話をいただいておりました。その地道な努力が大輪の花を咲かせる予兆を感じております。

図3:インドネシア子会社の営業利益推移

(出所:BBG、PT. MANDOM INDONESIA Tbk Quarterly Report)

最後に、私どもが引き続き着目していくポイントとして、IR資料の改善についてコメントいたします。今回は四半期決算ではありましたが、海外事業の状況については開示が限定的となっている点は、引き続き“もったいない”と感じた点です。

例えば前出のインドネシア事業に関して、構造改革が進んで業績が回復していることは、説明会のコメントや実績数値を紡ぐ等で一定程度理解は可能です。一方で、これまでと何が変わったことで業績のV字回復が実現出来たのかという要因を十分に理解出来ていないことにより、今後一層の回復・成長を期待させていただけるのかについて判断に迷う投資家が未だに多いのではと感じています。

同様に、その他海外地域における、当社のポジショニングや競合優位性とそれを踏まえた戦略が明確になっていない印象を受けており、その結果、四半期での売上の増減率を踏まえて、その先の業績に対する投資家の立場での予見性を高めることが困難に感じております。より長期目線の投資家を引き付けやすくするためにも、海外事業説明会等を通じて、海外事業に関する開示を一層拡充いただくことを期待させていただきます。

私どもは、西村社長のリーダーシップのもとで、当社が一段の進化を遂げられることを心から祈念するとともに、今後一段の改革を断行される中では、ROE5%目標の達成に留まらず、前出の私どもからのご提言書の中でも言及差し上げた、2桁ROEという高い目標を設定・実現いただくことを期待いたします。

構造改革という苦しい局面をリードされている経営の皆様、その実行に尽力されている従業員の皆様、それを陰ながら支えている株主の皆様が、企業価値向上の成果をともに分かち合えることを楽しみにしつつ、今後も、温かく、時には厳しく、叱咤激励エンゲージメントを継続していきたいと思います。

¹ インドネシア子会社は現地で上場しており、今回の親会社決算開示対象期間の翌四半期まで既に決算開示済
² 為替レート: IDR/JPY 0.009
³ マンダム連結ベースでの25/3期上半期インドネシアセグメント営業損失6.8億円との比較
⁴ 25/3期のインドネシアセグメントの営業損失との比較


尚、本投稿は特定の有価証券の申込の勧誘若しくは売買の推奨または投資、法務、税務、会計などの助言を行うものではありません。