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株主提案につきご報告

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株主提案につきご報告

(追加のご報告 – 3月24日)

 この度、下記2件の株主提案の内、取締役に対する株式報酬導入の件(第8号議案)につきまして3月20日付で私どもの提案の撤回を三陽商会に要請させていただきました。招集通知発送後、様々な企業統治専門家、企業関係者及び株主様と対話をさせていただき、会社案(第4号議案)との間での本質的な違いが小さく、対峙している意味合いが小さいというご意見を多数賜ったことによります。株式報酬と増配の提案は、経営陣と株主の目線を未来志向で合わせるためのセットである、として考える私どもの考え方は変わっておりませんが、会社案として株式報酬案が上程されたことは意義のあることで、その決定を評価させていただきたく存じます。尚、株主総会までの期間が短いことがあり、混乱を回避するという観点で撤回は受理されておりませんが、撤回を申し入れた旨が事実であることを表明させていただきます。

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(これより当初3月6日掲載文)

 Hibiki Path Advisorsの清水雄也です。お世話になっております。

 実はこの度、投資先の一社の株式会社三陽商会に対し、平成31年1月28日付で平成31年3月28日開催予定の株主総会において株主提案をさせていただきましたのでその趣旨につきご理解賜りたく、HPの場を通じ、三陽商会の皆さまのみならず、顧客及び投資先、そして懇意にさせていただいている皆さまにご報告をさせていただきます。

 提案内容は以下の2つになります。

1. 取締役(社外取締役を除く)への譲渡制限期間3年~20年の株式報酬の導入(第8号議案)
2. 一株当り配当を80円とすること(第9号議案)

 弊社が三陽商会(以下「当社」とさせていただきます)に投資を開始させていただいてから2年半が経過します。その間、経営陣や幹部の方々とも建設的な議論を継続させていただいており、今回のご提案もその流れの中でさせていただいております。提案内容からご推察頂ける通り、あくまで対立を企図したものではなく、経営陣の皆さまを応援し、価値を共有させていただだく趣旨の提案となっており、広く他の株主様にもご賛同いただきやすい内容と考えております。尚、株式報酬の議案については取締役会からも同議案が上程されており、弊社の提案はそれに対する修正案となり二者択一の形になっておりますが、基本的に目指している方向は同じと考えております。後段でその内容の違いと私どもの考え方をご説明させていただきます。

 当社は、その縫製技術の高さを認められ、1970年からは英国バーバリー社の国内ライセンシーとなり、日本のリーディングファッションカンパニーとしてその名を知られてきました。しかし、2015年にバーバリーとの契約が解除されてからは苦しい時期が続いており、2018年度まで3期連続赤字となりました。

 3期連続赤字と聞くと一見将来性が危ういように見えますが、実際2016年度及び2017年度の赤字と、2018年度の赤字は意味合いが異なると弊社は評価しています。最初の2年は、急転した事業を再浮上させるための守り中心のリストラクチャリングでしたが、2018年度は、希望退職の募集という苦渋の決断もあった上ですが、同時に、業界環境が激変しているアパレル産業の中で、ジャパン・プレミアム・ファッションカンパニーとして返り咲くための「攻め」の投資や販促費の増額も行う、不退転の決意を併せ持つ赤字であると考えます。2020年までにM&Aなどに100億超を投じる計画も公表されています。

 赤字の状態の上に、株主資本が500億円弱、そして売上が600億円弱の当社が100億円の投資を行うことは非常に大きな飛躍であり挑戦であります。弊社も株主として、一抹の不安を感じることも事実です。しかし、スピード感とリスク感覚、そしてバリュー感覚(高すぎる買い物をしないように)をバランスさせ、ぜひ挑戦頂きたいと考えています。業界の構造が変動しているときこそ挑戦の価値があり、この挑戦の成否によっては当社のブランド価値、そして企業価値は大きく変貌する可能性があるのです。

 そこで、その挑戦を遂行するにあたり、一番大切なことは取締役および執行役員といった幹部の方々が株主と目線が一つになり、同じ船に乗り、「リスク」も「将来の成果」も含め、全身全霊で共有いただくことだと私は考えております。私どもは、当社の経営陣の事業や自社ブランドへの愛情深さ、そして取締役としての責任感は他社に全く引けをとらないと感じております。そしてそこに私どもも全幅の信頼を置かせていただいておりますし、ここ数年で外部から加わった中間幹部層の方々の、熱意をもって事業転換に尽力されている姿には強く勇気づけられます。であるからこそ、そこに株式報酬によりさらに取締役や幹部の方々の「一個人としての」成功が紐づけられることによって、この挑戦自体の成功確率が上がると考えます。

 しかし、一部の皆さまが「株式報酬など3期連続赤字の今はまだタイミングが早いのではないか」と感じられる可能性もあることも承知をしております。ただ、当社が、言わば周回遅れの状態から、一気に全力で10人抜きをしようとしている「今こそ」、タイミングとして最も妥当だとも言えると感じております。株式報酬は、絵に描いた餅ではなく(勿論結果的にそうなってしまうことも多々あります)、会計士や弁護士が考える伝家の(抜かない)宝刀と言えるような万が一のための代物でもなく、「豊かになりたい」という人間の根源的な本能を呼び起こし、利他と自利を同化させ、V字回復へエネルギーを最大限発揮していただくためのリアリティ溢れるものです。

 尚、今回、株式報酬に関し、取締役会からも議案が提出されております(2月14日取締役会決議、第4号議案)。経営陣及び取締役会が今回、ご自身でそのようなご決断をされたことはリスクの目線を経営陣が共有する意味で評価に値します。しかし、株主の方々含め「なぜHibikiも提案を継続しているのか」疑問に感じられると思いますのでご説明させていただきます。

 本質的には、2つの案の違いは「譲渡制限期間」のみとなっております。「譲渡制限期間」とは株式報酬の支給を受けた取締役がその株式を売却し現金化することを制限される期間を言います。取締役会案は3年~5年、弊社案は3年~20年となっております。いずれの案にしても制限期間は「取締役会が決定」となっており、比較をすると弊社案の方が取締役会にとって実施時の自由度が高い内容となっていると理解しております。私どもは、中期インセンティブのみならず退職給付的な利用局面も想定し長期インセンティブも含めたバランスの上で当社に本制度を利用設計頂きたいと考えておりますが、取締役会案の通り、5年までを時間軸の一つの目途としての考え方で導入されることについても、より短期間で事業の結果を求めるように企図されているという意味で、しごく合理的と考えます。そのため、本件につきましては株主皆さま一人ひとりが夫々に合う時間軸により選択をするべき、と考えております。

 次に配当に関してですが、当社が赤字となった2016年度、その前年までの一株80円から40円に下げられています(※株式併合後の現在の株式数で統一して表記しております)。赤字でも配当を継続したことは評価出来ますが、当社は強固な財務基盤を有し、平成30年第三四半期ベースでも総資産767億円の内、189億円、総資産の25%が現金預金となっています。この189億円の現金預金を発行済み株式数で割った場合、一株当りは1,497円となります。今回ご提案させていただく一株80円は、この1,497円の約5%相当で、安定配当として特に無理のあるレベルではありません。さらに80円というのは、実は最近導入する企業も増加している純資産配当率(Dividend-on-Equity)で2%の水準です。例えば、類似企業の4社(アダストリア、オンワードホールディングス、TSIホールディングス、ユナイテッドアローズ)の配当予想から計算される単純平均で純資産配当率は実は3.7%となります。同業他社と比べても決して高いレベルをお願いしている訳ではなく、よって、私どもは、この80円の配当のご提案は、財務基盤を棄損しない、極めて現実的な内容と考えております。

 当社の過去3年の冬の時代を支えてきたのは、経営陣であり、従業員であり、銀行であり、取引先であり、すべてのステークホルダーであります。株主もそこに含まれます。株式は上場されておりいつでも売買可能ですので、既に見限って売却された株主もいるでしょうし、私どものように保有し続けた株主もいるでしょう。2015年のバーバリーショック以前から保有し、叱咤激励を続ける株主も沢山おられることと思います。今年度は黒字化は必達目標であり、さらにその先を見据えて100億円の投資を実行していく大事な転換期にあたり、厳しい時代を共に歩んだ株主にもいくばくかを報いることによって将来進歩的でウィンウィンの関係を構築できるのでは、と考えます。

 最後に、今回の提案につき申し上げたいことがございます。本提案の根源には、過去からの、いわゆるアクティビストと言われる投資家と企業との間の偏った事例によって、常に対立軸としてとらえられやすい構図に対するアンチテーゼとして見ていただきたいという意志があります。株主と経営陣が対立するステレオタイプな構図を打破するには経営陣一人ひとりが株主となり株主としての目線を取り入れて経営をすることが一番の近道です(主要株主が経営陣になることはより困難ですし、船頭多くして船山に上ります)。さらに、株主から進歩的な評価を取り付け、将来戦略への信認を強固なものにする上で(Dividend-on-Equityといった)明快で進歩的な配当政策は一つの強力な手段となり得ます。そのような施策の結果、総合的に高い株価評価を株主から受けた経営陣の経営の自由度は上がり、それが経営戦略の自信にもつながり、その自信と経験が経営判断をさらに研ぎ澄まされたものへと昇華させるスパイラルに入ることが上場企業の理想の姿ではないでしょうか - 勿論その「自信」が「過信」でないか、厳しくチェックいただく独立取締役の重要性はさらに強くなりますし、M&Aなどといった重要な経営判断が企業価値にプラスかという絶対的な価値基準はまさに経営陣に多く自社株式を持っていただくことで自ずと形成されるはずです。そのため、この株式報酬と配当増という2件の提案は、実はセットとして考えることに私どもの意図の本質があります。ある意味、ベンチャーキャピタルとその出資先はまさにそういった互恵的な関係かと思いますが、上場企業でこそ、そういった関係性からもたらされるステークホルダー全体にいきわたる正のネットワーク効果は大きいはずです。そういった関係性と気持ちで当社と今後も付き合っていきたいとの願いを込めた提案となっています。

 経営者の皆さまや他の株主の皆さまとそういった進歩的な関係に基づく資本市場のエコシステムを構築すること、そういった理想に向かって多少の見解の相違はあろうとも共に汗を流し一歩ずつでも行動すること、これが本質的なコーポレートガバナンスとスチュワードシップの理想の形なのではないでしょうか。私どもは個人の顧客のみならず、様々な基金の資金などもお預かりさせていただき運用しております。こういった顧客の皆さまに長期で最大の投資リターンを提供することが私どもの第一の責務ですが、この国をさらに良くするための何等かのきっかけを様々な場所で皆さまと共創することは株主や経営者や社員といった枠組みを超えて、国民一人ひとりに課された使命であると考えております。三陽商会への株主提案という行動を通じてではありますが、このような私どもの想いを皆さまと共有出来ればと考えております。

過去の数々の経緯からか、「株主提案」という言葉の響きが、一部の方々にはどうしても悪い印象を与えてしまいますので、私どもの趣旨を皆さまにご理解いただきたく長文とさせていただきました。このようなことを経ましても、私どもは引き続き三陽商会様の再生と成長を応援していきたいと考えております。

 何卒宜しくお願い申し上げます。

                                      平成31年3月6日

ひびき・パース・アドバイザーズ
代表取締役
清水雄也