皆様、ひびきの清水です。大変ご無沙汰しております。9月10日の日本経済新聞朝刊の一面にこのような記事が出ております。
役員だけではなく、従業員向けの株式報酬の導入割合が上場企業の30%と過去最高になったというニュースです。
株式報酬、社員にも 1176社に拡大 経営参加意識づけ 丸一鋼管は年収超え
ESOP(従業員確定拠出持株制度)やRS(譲渡制限付株式)といったテクニカルな要素はさておき、これは、株式市場の根底が変化しつつある現在、当然に必要な流れだと感じています。良い流れであることは間違いありません。
市場では新NISA及びインデックス型(パッシブ)の投資層が席巻し、個別優良企業の魅力を探し出して投資するアクティブ投資家の割合が縮小してしまっており、名前の知られている「大型株」と言われる企業以外は、今後加速するであろう持合いの解消の受け皿となれる株主を見つけることが難しくなりつつあります。
そうであればこそ、その需給ギャップを埋める手段、と同時に、自社の従業員の仕事のやりがいとそれに対する成果を一致させるモチベーション喚起の大事な手段として、株式報酬は意義深いと考え、私どもも、2017年に実は、従業員モチベーションとストックオプションという投稿をしております。
また、弊社2023年のホワイトペーパー、6つの提言で発表させていただいた、第一の提言「経営者、従業員が多くの自社株を保有する(p.29-p.30)」の主張もまさにそこになります。
以前から度々申し上げておりますように、SNS等の人と人がつながる手段が空気のように身近なものになった現在、長時間会社で働くということの意義、つまり、「組織に所属して一人では成し遂げられないような大きなインパクトで社会に係わる」という意義が希薄化しています。時代の流れ、と言ってしまえばそうなのですが、企業としての長期的な成長を図る上では従業員の連帯感の醸成が以前よりはるかに困難となっており、極めて憂慮されるべき流れとも言えます。これについては違う視点から書かせていただいた、2018年年始レター「顔」でも触れさせていただいております。
開示業務、投資家IR等、上場企業としての業務は増える一方です。機関投資家や個人投資家に懸命に自社をアピールすることは大切な業務ですが、実は一番身近(社内)に、会社の株主としてふさわしい人たちが沢山いるということです。そしてその層にしっかりと自社の魅力に気づいてもらいつつ、企業価値向上の成果を分かち合うことが、企業としての成長の一つのドライバーになる、ということに気づき始めている経営者が増えていることは日本の企業社会にとって一つの明るい材料なのかもしれません。昨今喧伝されがちな「企業“対”株主」ではなく「企業“アンド”株主」というインクルーシブな形で成長を図る構図がさらに市場に浸透していくことを切に願っています。
こちら、2024年9月9日 日経オンラインにも掲載されております。
従業員向け株式報酬拡大 1176社、経営参加意識づけ
なお、本投稿は、特定の有価証券の取得の申込みの勧誘若しくは売買の推奨又は投資、法務、税務、会計その他いかなる事項に関する助言を行うものではありません。